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遺言書について―検認が必要な場合

遺言書が出てきたら、確実に検認を済ませることが「失敗しない相続」の第一歩

葬儀のあと、故人の遺品等を整理していると遺言書が出てくることがあります。

日本では長い間、西欧諸国等と比べて「一般市民が遺言書をつくる」という風習が一般的でなかったかもしれません。とにかく、遺言書の取り扱いに慣れていない方が世の中にまだおおぜいいらっしゃることは事実でしょう。

では唐突に見つかった遺言書はどうすればいいでしょうか? 
家庭裁判所に頼んで、その内容を確認してもらうことが必要です。うかうかしていると、取り返しがつかない失敗につながる恐れがあります。

それでは検認とは何なのか、どうやって行えばいいのかをご説明しましょう。

そもそも、遺言書には3通りあります

遺言書は、作成方法に応じて民法上、3種類に分けられています。

1.公正証書遺言

遺言者が、公証人に依頼して遺言書を「公正証書」という形式で保存した場合、このように呼ばれます。

※この場合は、検認は不要です(公証役場で安全に保管されていて。偽造や変形の可能性が皆無なため)。

公正証書とは?

公文書の一種です。一般人であっても公証人に依頼すれば、書類を公文書の形で残すことができます。公正証書という形式を選ぶと、非常に高い証明能力を持たせることが可能となります。

2.自筆証書遺言

遺言者が、公証役場の手を借りずに遺言書を作成した場合は、このように呼ばれます。

※遺言の内容・日付・署名等を手書きして押印してあること等が前提条件です。
たとえば、録音テープやパソコンを使っていたり、他人に代筆させたりした場合は無効です。

費用をかけずに、遺言を作成できる点や好きな時間に好きな場所で作成できる点がメリットでしょう。
そして、誰かに知られたくない場合に内密に作成しやすい点もメリットです。

しかし、公正証書のような効力はありませんから、自身の没後に効力なしとみなされるリスクが付きまといます(実際に、遺言の正当性や内容の適性、作成時の判断能力等について争議の的になることがよくあります)。
さらに、偽造される可能性は非常に高いというデメリットは否定できません。

3.秘密証書遺言

名前の通り、秘密裡に遺言を作成したい場合に使える種類です。
被相続人は、作成した遺言を密封し、その封書を公証役場に提出します。その後、「公証人」と「証人(2名)」の立ち会いのもと、遺言書の存在を明らかにしてもらいます。

※自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な意味合いがあるシステムですが、昨今はめったに用いられません。

自筆証書遺言、との違いは、秘密ではあるものの、遺言書がつくられたことがはっきりしている点です。
また、作成にあたって署名以外は手書きでなくても無効になりません。

検認はなぜ必要なのか?

検認が必要となるのは自筆証書遺言ないし秘密証書遺言です。
これらの遺言書があることを知ったなら、主に次のような目的のために検認が必要になります。

  • その遺言の実態をはっきりとさせる
    (遺言書の形状・加除や訂正の状態・日付・署名・押印等が、確認すべきポイントです)
  • 偽造や変形を防止する

ただし検認が終わったら、自動的にその遺言が「有効」と確定するわけではありません。実は、公正証書遺言であっても、内容の効力は100%保証されているわけではないのです。

「……だったら、検認なんてやらなくていいのでは?」と早合点されがちですが、検認の第一の目的は「証拠の保全」にあります。遺言書の実態を調査して確定するために欠かせないプロセスなのです。

それに検認をきちんと済ませないと、晴れてその遺言書の内容が有効だと認められて以後に困った事態になってしまいます。
実は遺言の通りに財産を処分しようとしても、検認を受けた遺言書を持参しないと受け付けてもらえないのです。

遺産相続でおなじみの光景といえば、金融機関に出向いての預貯金の解約や名義変更、あるいは不動産の名義変更(=登記)ではないでしょうか? 
しかし銀行に行っても、検認された遺言書を提出しないといくら相続人だと主張しても通常は預貯金を動かしてくれません。これでは遺産を相続した意味がありませんね。

検認の前に、やってはいけないこととは?

検認の重要性について説明したばかりですが、検認手続きの準備に取り掛かる前に、必ず守らないといけないルールについて取り上げましょう。

封印がある遺言書は、必ず家庭裁判所が開封して調査を行うことになっています。つまり勝手に開封してはいけないのです。

「開封イコール無効」ではありません。
それだけで遺言書の効力がなくなることはないですが、「偽造した」という容疑に発展する恐れがあります。

うかつに開封してしまうと……法の定めにより、最高で5万円の過料(罰金刑)を課せられてしまいます。遺言書が出てきたら、中身を見ようとすることは避けてください。その場で、弁護士事務所等に連絡するのもいいでしょう。

※以下の場合も同様の罰金刑を受けます。
・自筆証書遺言or秘密証書遺言があるにもかかわらず、家裁に提出しなかった場合
・自筆証書遺言or秘密証書遺言があるにもかかわらず、検認を行わないまま遺産相続に踏み切った場合

さらに補足しますと……万一、遺言を偽造や変形、あるいは破棄や隠匿等をやらかした場合は、相続欠格者とされてしまいます。遺言書は、みだりに中身を見るのもいじるのも厳禁なのです。

それでは検認は、どう手続きしたらいいのか?

遺言の保管者は、相続開始を知った時点ですぐに家庭裁判所に出向いて、「検認の申立」を行います。

※被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に出向く必要があります。
 遺言書1通につき、収入印紙代(¥800)が必要です。また、郵便切手の費用も負担します。

申立人は、以下の品物をそろえましょう。申立人になるのは、その遺言書の「保管者」ないし「発見者となった相続人」です。

  • 申立書1通
  • 被相続人の「出生時~死亡時の、戸籍・除籍・改製原戸籍等の、謄本」全部
    (申立の日までに入手不可能な戸籍等があったら、それは追って提出してもOKです)
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • 遺言書の写し(開封されてしまった場合)

※受遺者(遺贈を受けた人)がいる場合は、その住民票も提出します。

また、遺言者の子(およびその代襲者)の中に死亡者がいた場合は、その子(およびその代襲者)の戸籍謄本類も必要です。
つまり、その子(およびその代襲者)の「出生時~死亡時の、戸籍・除籍・改製原戸籍等の、謄本」全部も合わせて提出することになります。

検認の手続きの流れ

段取りを、順を追って説明しましょう。

1.申立の受理

書類に不備がなければ、ひと月~ひと月半くらい経ったころに、家庭裁判所から相続人全員に向けて、検認期日の通知が送られます。

2.検認期日

期日当日に、保管者が遺言書の原本を持参・提出します。

※相続人がその場に行けない場合は、欠席してもOKです。あるいは、代理人が立ち会ってもOKです。
欠席した相続人には、検認の結果(検認済通知書)が追って通知されることになっています。

3.遺言書の開封

全相続人が見ている前で、内容の確認を行います。

※相続人はこの立会いの際に、何か異議を唱えたい場合はその場で陳述することが認められています。
たとえば「遺言書の筆跡に関して、被相続人のそれではないと思われる」といった偽造・変形の疑い等が考えられます。

4.遺言書の返却

家庭裁判所は遺言書の写しを保存します。その後原本を、検認を行ったことを証明する文書を添付して保管者に返します。

5.文書作成

家庭裁判所は「検認済証明書」「検認調書」を作成します。

遺言書が見つかったら、厳重に管理を!

自筆遺言書が出てきたら、むやみに手を加えることはNGです。そして迅速に家庭裁判所で検認の申立をしないといけません。

どこかに間違いがあると時間が無駄になりますし、些細な誤解がもとで相続ができなくなる危険性があります。ひと言ご連絡いただければ、遺言書の管理から検認の手続きまで、状況に合わせて最適なアドバイスを提供させていただきます。

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