相続の開始は、いつからでしょうか?
相続の開始は、近親者が集まって、遺産の分け方を協議しはじめたときではありません。実は故人が息を引き取った直後からはじまっているのです。
相続がいったんはじまると、やらないわけにはいかない手続きが次から次へと浮上してきます。「まだ時間があるだろう」と思っていると、足元をすくわれることもありますね。
「いつくらいまでに」「どんなことをしないといけないのか」、大まかにでも覚えておきたいところです。
相続開始の条件(実は、死亡したときだけではありません!)
現在の民法では、相続は被相続人の死亡が確認されたたら行われることになっています。
しかし例外もあります。何らかの原因で、その人の生死が確認できないままある程度の月日が流れた場合も、失踪宣告が行われると相続の対象になります。
- 普通失踪(7年経過しても失踪したままの場合)
- 失踪し、まったく連絡が取れず生死も定かでない場合
- 特別失踪(1年間失踪したままの場合)
- 何らかの事故や災害などに見舞われた可能性が濃厚な場合
※「特別失踪」については、山や海で失踪した場合のような、遺体がとにかく見つからないケースが大半です。
平成23年の東日本大震災のあとも、この特別失踪に該当した事例が相次ぎました。
相続がいったんスタートしたら
相続は死亡が確認されたら速やかにスタートしますが、その際に特に何らかの手続きをする必要はありません。相続人が、相続の放棄ないし限定承認等の手続きをとっていない限り、
自動的に被相続人の財産を相続することになります。
※戦前は「隠居」という制度があったため、生前であっても「隠居」を行うと家族への相続が開始されました。
しかしこの制度は廃止されました。現在では「法律上、死亡した」とみなされるまで相続はスタートしないのです。
相続の具体的な流れとは
ケースバイケースではあるものの、相続で発生する手続きは多いですし、何かと手間取るもの。なるべく早めに行動して、すべてをそつなくこなしたいところです。
1.死亡
医師から死亡診断書の発行を受けます。提出する場所が多くなることもあるため、死亡診断書は複数受け取っておくほうが無難です。
※年金や保険については、被相続人に代わって死亡の報告をして、どうすればいいのか指示を受けることになります。
2.葬儀などの葬祭
葬祭は、2~3日程度かかることが一般的のようです。
お通夜や告別式だけでもたいへんですが、相続についても、できればこの時期から着実に計画を立てていきたいところです。
3.死亡届の提出・遺骨の埋葬
死亡届を市区町村長充てに、7日以内に提出します。
なお埋葬は、死亡後24時間以内にはできません。
4.49日の法要
損をしない相続に向けた準備は、この時期が終わるまでにできるだけ進めておくのがベターでしょう。
5.遺言書の確認
遺言書があるかどうか確認します。
自筆証書遺言や秘密証書遺言が出てきたら家庭裁判所で検認を受ける必要があります
(遺言書が公正証書だった場合はその必要はありません)。
※封をしてある遺言書を、無断で開封すると5万円以下の罰金を科せられます。見つかっても、その場で開けることは絶対に避けましょう。
6.相続人の確認
誰から誰までが相続人になるのか、正確に確認する必要があります。
本籍地から戸籍謄本を取り寄せてチェックするに越したことはありません。
7.遺産の内容確認
プラスの財産だけではなく、借金やローンのようなマイナスの財産ももれなく調べ上げないといけません。
8.限定承認・相続放棄の申し立て
必要があるなら申し立てます。
財産も夫妻もいっさい相続したくないなら「相続放棄」、負債を相続してしまうリスクを避けたいなら「限定承認」を選択します。
相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に出向いて行わないといけません。
9.準確定申告
相続人が被相続人に変わって所得税の申告・納付を行います。
死亡から4ヶ月以内に行わないといけません。
10.遺産の評価
相続税の計算ともかかわってくる重要な作業です。
11.遺産分割の協議
相続人全員で話し合います。なかなかまとまらないなら、家庭裁判所の調停等を利用する必要が出てくるでしょう。
結論が出たら、遺産分割協議書を作成します。
12.相続税の申告・納付
死亡から10ヶ月以内に行う必要があります(ただし、延納は可能)。
13. 遺産の継承に向けて、最終作業
不動産の名義変更や預貯金の解約等をすることが多いですね。
※また、健康保険・年金等から葬祭費の支給を受けられる場合があります。該当するなら各機関に出向いて、手続きを行いましょう。
相続の手続きは、弁護士の助けを得ると劇的にスムーズになります!
相続手続きでは、やる必要のある作業がたくさん出てきます。しかしそのわりに、時間的余裕がなかなか与えられないのが実情です。
弁護士の手を借りて、できるだけスムーズに、間違いが起こらないようにやっていくことがベストでしょう。