形式不備な遺言書があった場合、当然ながらその遺言書は法的効力を有していません。遺言書の作成は厳格な規定がされていますので、1つでも要件を満たしていないとなれば、あっという間に無効とされてしまうのです。しかし、遺言書としては無効となっていても、死因贈与としては有効になる場合があります。死因贈与というのは、死をきっかけにして財産を贈与することです。
つまり、たとえ形式不備な遺言書であっても、死因贈与として財産の移動を有効にする可能性が残されているということです。
重要なのは死因贈与契約の成立
形式不備な遺言書を利用し、死因贈与の主張をするには、家庭裁判所に死因贈与を認めてもらう必要が出てきます。そこで重要となるのが、死因贈与契約が成立していたかどうかの1点です。
どういうことかというと、「私が死んだらAに財産を譲ろう」といった、死をきっかけにして贈与を促す発言や書面(ここでは遺言書)が残されていて、Aがこの贈与を受け入れた事実があれば、死因贈与契約は成立することになります。これによって、形式不備で無効であった遺言書が、死因贈与契約の申し入れ書に代わるというわけです。
認められないこともある・・・
ただし、形式不備な遺言書を利用した死因贈与については、明確な判断基準が出されているわけではありませんので、家庭裁判所の判断も分かれているところがあります。最終的には裁判官の判断となりますので、必ず認められると断言することはできません。
しかし、相続人同士が死因贈与に納得しているのであれば、わざわざ家庭裁判所に判断を求める必要はありません。たとえ、形式不備な遺言書どおりに相続をしてしまっても、相続人同士が納得しているのであれば、なんら問題が生じることはないのです。上記のような家庭裁判所の判断が必要となってしまうのは、相続人同士が揉めてしまった場合です。
遺言書は専門家に作成補助をしてもらおう
ここまで形式不備な遺言書についてのご説明をしてきましたが、一番良いのは形式がしっかり整った遺言書を残すことです。しかし、遺言書の細かい作成要件は一般の方には少し難しいと言えます。そこで、遺言書を作成する際は専門家に相談し、作成補助をしてもらうことをおすすめします。こうすることによって、形式不備な遺言書が残されることはなくなり、相続人同士が揉めてしまう危険性を減らすことが可能になると言えるでしょう。