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相続財産の取り扱い―相続財産を共有するとはどういうことか

遺産相続のときは「他の家族(相続人)と共有する財産」が当たり前のように発生します

人が亡くなると、近親者が集まって遺産を分配することになります。

しかし、すぐにすべての遺産を分配できるとは限りません。しばらくの間、「相続人全員で、共有する財産」が発生することもあれば、速やかに分配される財産もあります。
自身の「取り分」がはっきりしている場合でも、すぐに自分のものにならないケースがけっこうあります。この原理を理解すると、財産を相続するにあたってのプランを立てやすくなります。

「相続財産を、共有する」というプロセスは、本当にコンスタントに発生しています

いったん相続がスタートすると、被相続人の権利・義務は相続人たちに継承されることになっています(ただし、被相続人の一身に専属されていたもの(例えば年金をもらう権利など)は含まれません)。

相続人が1名しかいない場合や、一人ひとりが継承する財産の内容が最初から確定している場合なら迷うことはないでしょう。しかし現実には、各々の相続分が確定するまで時間がかかることがよくあります。

そしてその間は、「相続財産を、相続人全員で共有する」という事態になることが普通なのです。

共有とは? 相続財産をどんなニュアンスで管理するのか?

相続財産の共有とは、わかりやすく書くなら
「相続人同士で、相続財産を同じ条件にて所有する」
「相続財産に対して、相続人全員が平等に権利を有する」
……ということになりますね。

よく話題になるのは、家や土地のような不動産が遺産に混ざっている場合です。
相続人が2名以上いるなら、遺産分配のやり方が決まるまで共有することになります。そしてその間、「各相続人の独断で、その家or土地を売ってしまう」ということは認められません。「売って換金して、分配しやすくしたい」と思っても、他の相続人の意向を無視して処分することはできないのです(相続人全員の同意を取り付ける必要があります)。


被相続人の遺産の中に、1億円の価値がある不動産があるとします。

相続人が妻・息子・娘で、相続分は妻が二分の一、息子と娘はそれぞれ四分の一です。
この場合は、妻が5000万円分、息子と娘は2500万円分の持ち分があることになりますが、正式な遺産分割が終わるまでは、共有していることになります。勝手に処分することはできません。相続人の3名全員が、その不動産全体に対する権利を持っていることになるのです。

※共有している間は、その不動産の賃貸収入や固定資産税も持ち分に応じて分配することになるのが通常です。


分割をしようとせずに、継続的に共有状態を続けるという手もあります。

遺産の分割において、相続人の間で紛争が生じることはよくありますが、それを避けるために「分けにくい遺産をずっと共有する」という方法を選ぶケースもあるのです。

※しかし、「永続的に共有していれば波風が立たない」とは限りません。
共有したままでは、他の相続人の同意を得ずに売ったり利用したりすることはできませんし、年月が経つと結局トラブルの原因になってしまうこともありえます。
判断にあたっては、相続法の専門家の助言を得ながら慎重に行う必要があります。

それでは、共有されない財産とは?

被相続人の財産が、相続人同士の間で共有される期間はいつからいつまででしょうか? 答えは、「相続手続きがスタートしてから、遺産分割手続きが完了するまで」となりますね。

しかし、最初から共有されない財産もあります。分割が容易な「金銭その他の可分債権」は、共有されない財産の代表格です。

★金銭その他の可分債権とは?★

分割に手間取る可能性が基本的にない、金銭や債券という形態を取る財産を指します。以下が典型です。

  • 金融機関の口座の預貯金
  • 返済が済んでいない、金銭による融資

これらに関しては相続開始後に、共有されずに速やかに分割・承継されることが認められています。


被相続人の遺産の中に、800万円の銀行預金があるとします。

相続人が妻・息子・娘で、相続分は妻が二分の一、息子と娘はそれぞれ四分の一です。
この場合は、妻が400万円分、息子と娘は200万円分の持ち分があることになり、相続の開始と同時に分配されます。

ほかの相続財産の分割がまったく終わっていなくても、こうした財産について被相続人は自分の一存で動かすことが認められています。
注意が必要なのは、金融機関では、凍結された口座の金銭を引き出すために、相続人全員の実印と印鑑証明を用意するよう求める窓口実務が定着しています。私も経験がありますが、弁護士などの専門家が乗り出さないと、上に書いた理屈のとおりの処理をしてくれない金融機関は多数あることに注意してください。


※可分債権に関しては、以下のページで詳細に紹介しています。
⇒可分債権の相続の扱い(金銭などの可分債権)

共有される財産とされない財産についてはケースバイケースで変わります

共有という概念は、財産の相続にあたっては非常に大切です。一時的に共有された財産を追ってスムーズに分割することができれば、的確な相続に成功したといえるでしょう。
そして、共有されずただちに分割される財産についても正しく認識することで、やはりスムーズな相続を実現できるはずです。

しかし、各家庭が遺産に関して抱えている事情はバラバラですね。何が共有されて何が共有されないかを素人判断すると、大きな失敗を招くことがあります。個別のケースについてはご相談いただければ、速やかに回答させていただきます。

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