相続とは何? 注意点はどんなこと?
「相続」とはいったいどんなことでしょうか? 人が亡くなったあとに、その人が持っていた財産を相続人が包括的に受け継ぐことです。
各界の有名人が亡くなると、「遺産相続」のニュースが話題を呼ぶことがありますね。しかし、何も特別な資産家でなくてもかまいません、日本の民法では、人が亡くなると必ずその財産的な権利・義務すべてを相続人の間で継承することになっているのです。
それに、相続の対象となるものの範囲はとても広いです。いわゆる「預貯金」「建物」といった、よく遺産相続で取り上げられている財産ばかりではありません。相続財産の内容のチェックは、どんな方にとっても大事です。念入りにチェックしておかなかったために、「身内の不幸が襲ってきてから、いつの間にか思わぬ損をしていた」なんて結果になったパターンも多いですね。
- 「相続」は人の不幸があれば、原則としてどんな状況でも行う必要がある
- 相続内容の確認や手続きは、早めに進めないと損をする恐れがある
相続のせいで、トラブルが起こるケースは少なくありません。
何かわからないことがある場合は早めに弁護士に相談して、失敗しない相続をするための準備をすることがおすすめです。
相続は誰と誰の間で行われる?
相続の当事者は、故人の財産を受け継ぐ「相続人」と、財産の権利・義務を譲り渡す「被相続人(つまり、故人のことです)」です。
被相続人は個人を単位として考えますが、相続人は複数名に及ぶことがほとんどです。
相続人←被相続人→相続人
被相続人→(遺産)→相続人
相続で、受け継がれる財産とは? どこからどこまで?
1.相続で、継承される財産の範囲は?
- 動産(預貯金・有価証券etc.)・不動産(土地・建物etc.)
- 債権(貸金・売掛金etc.)
- 債務(借金・履行前の損害賠償債務etc.)
※ここで大事なことは、借金のようなマイナスの財産も受け継がなければならないということです。
2.相続で、継承されない財産の範囲は?
- 退職金・年金・生命保険金のような、被相続人だけが受け取る権利を持つもの
- 祭祀財産(位牌・墳墓etc.)
- 身元保証など、被相続人の一審に専属するもの
相続で、よく起こっている問題とは?
相続で起こる問題の幅は広く、家庭ごとに違います。
とはいえ、よく起こりがちなトラブルもあることもまた事実ですね。
ここでは、代表的な相続をめぐる問題やトラブルの例を並べてみましょう。
1.遺言の有無がはっきりしない場合
被相続人が、生前に遺言を正しい手続きにのっとって残していれば、その内容にもとづいて進められます。
しかし、相続には期限があります。遺言の所在が判明しないために、その確認だけで大幅に時間が無駄になってしまうことがあります。
2.遺言の法的効力に支障がある場合
遺言書があっても、法の規定を遵守しながら作成されていないと効力は発生しません。
その点で疑念が生じたために、大きなトラブルになることがあります。
3.分割の内容を巡って、相続人同士での紛争が起こる場合
小説や映画等でよく見られるシーンですね。しかし残念なことに、現実の社会でもしばしば発生しています。
特に、被相続人が意外な遺言を残していた場合や、円満な分割が難しい財産がある場合は、紛争が起こりやすくなります。
4.生前の被相続人の判断力が、不充分だった場合
被相続人の心身の状態に問題があると、財産の管理能力等に支障をきたすことがあります。
それが原因で、死亡後の相続に大きな悪影響を残すこともよくあります。
※「成年後見制度」「任意後見制度」等を生前に、早めに利用することで、こうした問題を回避するチャンスがあります。
5.相続税対策が必要な場合
相続税を払うために、財産を売却しなければならないことも少なくありません。
これが原因で、相続人の間のトラブルに発展することも非常に多いです。
6.2名以上が亡くなったものの、その順序がはっきりしない場合
事故や災害では複数名の犠牲者が出ることがよくあります。
夫婦や親子等が犠牲になった場合、死亡の順序を正確に確認できないことが多いですが、
こうなると相続の順序も決められません。
※どうしてもはっきりしないなら「同じタイミングで亡くなった」と判断して対処する手があります(同時存在の原則)。
7.不利な条件で遺産が分けられてしまうことを防ぎたい場合
相続人にとって不利な遺言が残されている場合や、生前に財産の大半がすでに贈与という形で譲渡されてしまっている場合があります。
しかしこうした場合でも、泣き寝入りするしかないわけではありません。
「遺産分減殺請求」という手続きを取ると、自身が受け継ぐ権利があった財産について、返還の請求が可能です。
※ただし、実際にやるとなると高度な知識が要求されるため、弁護士の力添えは必須となります。
これらのほかにも、さまざまな問題が毎年のように各地で発生しています。
弁護士はなぜ必要なのか?
弁護士は、相続で必要となる業務の大部分を遂行することができます。
弁護士以外にもいわゆる「士業」と呼ばれる法曹関係の職業は何種類もあります。しかしどの職業も、相続問題では、限られた範囲でしか活躍できません。
1.行政書士・税理士・司法書士でもできる業務
- 遺産の調査
- 相続人の調査
- 遺産分割協議書の作成
2.司法書士でもできる業務
- 相続登記
3.税理士だけができる業務
- 相続税の申告
4.弁護士だけができる業務
- 紛争が起こった場合に、法的な介入を行うこと(調停・審判etc.)
- 相続人の代理人となること(他の相続人との交渉・書面の作成etc.)
相続人の代理人となって交渉を行ったり、あるいは裁判を起こしたり……、といった法律行為を認められるのは弁護士だけなのです(その他の「士業」に頼んでも、せいぜい助言や事務的な手続きまでしか期待できません。万一、その他の「士業」が交渉や訴訟等の業務に手を出したら、処罰を受けてしまいます)。そして現実の相続をめぐる紛争では、まさにこうした業務が強く求められています。
弁護士には、紛争をスムーズに、そしてできるだけ円満に解決する役割も期待されます。また、紛争を予防する上でも弁護士の貢献は欠かせません。
相続が実際にはじまっている場合や近い将来起こりそうな場合はもちろんのこと、
遠い将来に備えておきたい場合でもかまいません、相続に関する相談事は弁護士にまず依頼しましょう。