相続財産の探索は、全国各地の世帯でしばしば難題となって降りかかっています
故人の近親者にとって、相続手続きは頻繁に悩みの種になっています。
- 葬儀を行いながら、並行して進めていく必要がある
- タイムリミットが決まっている
これらの点が影響しているためですが、次の点も経験の少ない相続人にとってはかなりの負担になっています。
相続財産をことごとく探し出さないといけない
実際の話、見逃した財産がもしあれば大損をする恐れがあります。あるいは、ずいぶん時間が経ってから納税のやり直しを要求されるリスクもゼロではありません。
そこで以下の2点が特に大切になってきます。
- 相続財産の区分をよく知っておくこと
- それぞれの探し方を把握しておくこと
このページでは、遺産相続で特に焦点となる「不動産」「預金」「証券」にスポットライトをあてて説明します。
相続財産探しをする期間は、官公署や金融機関の窓口で手続きをする機会が多くなります。
このとき、故人との関係を証明する書類(身分証明書や戸籍謄本等)を要求されることが多いです。
つまり、葬儀のあと早めに取り揃えておくに越したことはありません。
故人の財産探しで目印となるのは?
遺品整理と並行して、財産とかかわりがあるものを徹底して探し出しましょう。
特に書類関係には敏感になる必要があります。
- 通帳
- 自治体や金融機関から送付されてくる書類
- 確定申告時の書類
- その他、契約書の類
- カードの類
↑ここまではどんな方でもあまり苦労せずに思いつく目印です。しかしこれだけではありません。
- 銀行等が発行しているカレンダーや粗品
- パソコン等のブックマーク
これらは、故人が取引していた金融機関を漏れなく探し出す上で、重大なヒントになることがあります。特にPCのようなIT関係の機器や情報は、オンライン取引の証明になるケースが近年増加しています。
相続財産の目録を作成して、財産探しと手続きのスピードアップを
「財産目録」は、税務署に相続税申告用の用紙が用意されています。
もっとも、財産目録の作成や提出は相続の場合には、必ず必要というわけではありません。しかし故人が目録を残していない場合(遺言状しか残っていない場合も含みます)は、スムーズかつミスのない手続きを進める上で、財産目録を作っておくことが、きっと役立ちます。手間が発生しますが、おすすめできる作業です。
故人が遺した不動産を調べ上げたいとき
土地や建物がある場合は、相続税の申告が必要な場合が増えます。
不動産の場合には、官公所を含め、かなり明確な管理が行われています。
1.固定資産税課税通知書を探す
役所・役場からは、毎年5~6月頃に固定資産税課税通知書が送付されます。これを見ることで、どのような土地や建物があるのか、かなりハッキリしてきます。
※評価額が低い不動産の場合は送付されないことがあります。
また、故人が保存していないことも考えられます。
2.役所・役場の「固定資産税課」に出向く
この部署では、「固定資産名寄帳」を閲覧することができます。この台帳から、故人がどんな不動産を所有していたのか確認できます。確実性の高い方法でもあります。
※「固定資産名寄帳」は、「土地家屋課税台帳」あるいは「固定資産課税台帳」といった名前で呼ばれることがあります。
※ 名寄帳は、市区町村単位で作成されていますので、思ってもいない市区町村にある不動産については発見ができない場合があります。逆に市区町村が分かれば、名寄帳で確認ができるというわけです。
3.故人の住所を管轄する、法務局に出向く
被相続人が所有していた不動産の内訳が明らかになったら、法務局に出かけます。
「不動産登記簿謄本(登記事項証明書)」の発行を申請しましょう。これは、不動産の権利関係を証明する書類となります。
4.もう一度、役所・役場に出向く
今度は「固定資産評価証明書」を発行してもらいます。
これは、不動産の評価額を知る手がかりになる書類です。固定資産評価証明書には、市区町村がしている不動産の評価額が、金額で書いてあります。時価よりも低く設定されることになっていますが、不動産の価値を知る大きな手がかりになります。
法務局の登記事項証明書からは、その不動産の抵当権・根抵当権の有無も確認しましょう。
これによって、債務があるかどうか、どこに対して負っているかが大体わかります。
また、登記の内容が正しいとは限りません。実際の土地・建物の内容とそぐわない事項が記載されていることも珍しくないのです。
言い換えるならば、その不動産の状態を現地に行って確認する必要が発生するケースもあでてきます。
個人が遺した預貯金を調べ上げたいとき
預貯金は、財産探しの際によく見落としが発生しているといわれています。何としてでも、すべての口座とすべての預入金を調べ上げたいところです。
1.通帳を見つけ出す
「故人の財産」といわれたら、大半の方が真っ先に預金通帳を思い浮かべるのではないでしょうか。実際に被相続人の預貯金を確かめるとなったら、通帳探しは最優先項目となりますね。
2.窓口にその通帳を持参する
通帳が出てきたら、その金融機関の支店の窓口で記帳します。
そして「預金残高証明書」を発行してもらいましょう。
(こちらのページでもふれていますが)預金残高証明書を申請したら、金融機関では相続手続きが終わるまでその口座を凍結します。
つまり手続きがすべて終わらないことには、預貯金の引き出し等はできません。
なお口座の預貯金の変動を確かめたいときは、「移動明細記録」を申請すればじっくりとチェックでいます。
※「残高証明書」だけでは、「直前に大金が引き出されていた」なんて事実があっても気づかずに終わってしまう恐れがあります。
4.通帳がなかなか見つからない場合は?
通帳が出てこない場合は、その地域に存在する金融機関の支店等を調べて、故人が口座を持っていそうな金融機関すべてに対して「名寄せ」手続きをすることになります。
通帳を提示できないと、戸籍謄本や身分証明書、印鑑証明等を持っていく必要が出てきますが、預金の残高証明や預金台帳のコピーの発行を受けることができます。
※「名寄せ」は、同一の銀行に2つ以上の口座がある場合に、それを発見できるというメリットもあります。
通帳が出てこなくても故人のクレジットカード等がある場合は、その利用明細等にまず目を通すことが大事です。
どこの口座を使っていたのか手がかりが見つかる可能性があるからです。
個人が遺した証券を調べ上げたいとき
1.株式の有無を確認する
証券会社からの書類や株式会社からの株主総会に関する通知を探しましょう。
また、通帳を見ると配当の入金や証券会社への入出金の履歴が記載されていることがあります。
オンライン取引をやっていた可能性があるなら、できれば故人のPC等も確認したほうが無難です。
2.証券会社や金融機関に出向く
株式や国債のような有価証券で困るのは、「いくらくらいの価値があるのか」が、素人には判定しがたいことです。その点では、不動産に負けていません。
そこで、故人が口座を持っていた証券会社や信託銀行等に出向いて、「評価証明書」の発行をしてもらいましょう(死亡時に、その株式の価値がいくらだったのかを金融機関が証明してくれるものとなります)。
不動産・預金・証券はいずれも相続財産の中心です。見落としがないよう努力しましょう!
官公署や金融機関では、故人の財産に関する手続きや書類の発行には手慣れています。未経験の方が申請しても、親切に応じてくれることはよくあります。
それに不動産や預貯金、株式いずれを探す場合も、慣れてしまえばそれほど難しい作業ではないでしょう。落ち着いて取り掛かれば、時間を無駄にせずに進められるはず。
とはいえ、探し方に間違いや漏れがあると、数ヶ月~数年が過ぎてから大きな後悔にさいなまれるケースがあります。
たとえば銀行口座の場合、「故人が家族にも知らせずにつくっていた」というパターンが、驚くほど頻発しているという実態があります。
こうした口座は遺族に気付かなければ凍結されたままになりますが、ここに「時効」があります。預貯金の場合、請求できる猶予は10年と定められているからです。
この手の、知られざる休眠口座の総額はけっこうな数字に上ると金融機関関係者からよく指摘されています。
結局、素人が自力ですべての遺産を見つけ出そうとする場合は、どこかで見逃しが生まれるリスクと隣り合わせなのです。確実に損をしたくなければ、早いうちに弁護士のようなスペシャリストの協力を頼むことが無難でしょう。